「自分らしさ」を語る前に、自分の食い扶持を稼げ。成果を出すミドルが絶対外さない“earn”の思考法

仕事の環境

毎月末、当たり前のように口座に振り込まれる給与明細。
あなたはその数字を見たとき、自分の背後に横たわる「本当のコスト」を計算したことがあるでしょうか。

「ワークライフバランスを大事にしたい」
「自分らしいスタイルで仕事がしたい」
「やりたくない業務には意味を感じない」

価値観が多様化する現代のオフィスで、こうした主張をする若手や後輩が増えています。一見すると尊重すべき意見のように聞こえますが、その言葉の裏側にある「経済的現実」から目を背けているとしたら??。

今回は、30代・40代で組織の核として成果を出し続けるビジネスパーソンが、絶対に外してはならない「 earn(稼ぐ)の絶対原則」について深く考察します。


1. 年収600万円の社員に、会社が支払っている「真の原価」

月曜日の朝9時。オフィスに座り、パソコンを開いてメールをチェックする。

快適な空調、用意されたデスク、毎月支給される社用PC、利用し放題のWi-Fi、そして困ったときにサポートしてくれるバックオフィスや同僚たち??。私たちは普段、これらを「空気」のように当然のものとして受容しています。

しかし、経営やマネジメントの観点に立てば、これらはすべて「莫大なコスト」です。

例えば、額面給与が年間600万円の社員が一人いるとします。会社がその一人を雇用するために負担している金額は、決して600万円にとどまりません。

  • 社会保険料の会社負担分(給与の約15%)
  • オフィス賃料・光熱費・システムライセンス料
  • 採用費用や研修費、福利厚生費
  • 間接部門(総務・人事・経理など)の人件費按分

一般的に、社員一人が存在するだけで「額面給与の1.5倍から2倍のコスト」が会社から出ていっています。つまり、年収600万円のプレイヤーであれば、年間最低でも900万円?1,200万円相当の価値(粗利や限界利益)を創出できて初めて、会社にとって「収支トントン(プラマイゼロ)」なのです。

この冷徹な数字の現実を、どれだけの社員が自分事として理解しているでしょうか。


2. 「給与をもらって赤字」という、歪んだ自覚なきフリーライダー

「自分なりに毎日頑張ってタスクを消化しています」
「残業もしているし、それなりに働いているはずです」

そう語る若手社員の案件データを開いてみると、クライアントからの売上は微々たるもので、実際の稼働時間を案件単価に換算すると大幅な赤字。それにもかかわらず、本人は「自分らしく働けているか」というメンタル面にばかり意識が向いている??。

こうしたシーンに遭遇し、頭を抱えた経験のあるマネージャーも多いはずです。

個人生活であれば、話は至極単純です。
収入が月30万円で、支出が月40万円なら、翌月には10万円の赤字。それが続けば生活は破綻し、家賃も払えず、食事すら喉を通らなくなります。誰でも「稼ぐこと」が生存の絶対条件であることを理解しています。

ところが、ひとたび「会社」という組織の傘に入ると、この健全なリスク感覚が麻痺してしまう人がいます。

どれだけ赤字を出そうが、どれだけ生産性が低かろうが、毎月25日になれば満額の給料が口座に振り込まれるからです。自分の出している赤字分は、隣で深夜まで汗を流して大きな案件を獲ってきた同僚や上層部が、陰でカバーして埋めている。にもかかわらず、当人は「どこ吹く風」でこう言い放ちます。

「私は自分の価値観を大切にしたいので、無理な残業や苦手な泥臭い営業はしたくありません」

これは厳しい言い方をすれば、他人の稼ぎにタダ乗りして自分の理想を追う「自覚なきフリーライダー」に他なりません。


3. 「自分らしさ」は、自分の足で立った者だけに許される高級品である

もちろん、個人の価値観や自分らしい働き方を否定したいわけではありません。多様性を認め合い、一人ひとりが活き活きと働く職場をつくることは、現代ビジネスにおいて極めて重要なテーマです。

しかし、ここには絶対に履き違えてはならない「順番」が存在します。

【誤り】 自分らしい価値観・スタイルで働く ? その結果として給料をもらう
【正解】 まず自分の食い扶持(コスト以上の価値)を稼ぐ ? その上で自分らしさを構築する

「自分らしさ」とは、自立したプロフェッショナルだけに許される“高級品”です。自分の存在コストすら回収できていない段階で「自分らしさ」を主張するのは、プロのビジネスパーソンではなく、授業料を払って通う「学校の生徒」の思考域を出ていません。

もし、「稼ぐこと」や「コスト以上の価値を出すこと」を不当な搾取や嫌なことだと拒絶したいのであれば、選択肢は一つしかありません。

会社を辞め、個人事業主(フリーランス)として独立してみることです。

自分で案件を獲り、見積書を送り、納品し、入金を確認する。入金がなければ翌月の家賃が払えない恐怖と対峙したとき、初めて人間は「価値を提供し、お金をいただく(earn)」という営みの重みと感謝を身体感覚として理解します。

一度でもその地獄をくぐり抜けてきた人材は、会社という組織がどれほど強固な守りであり、リソースの塊であるかを痛感します。だからこそ、組織に属しながら圧倒的な成果を出し、その上で自分のやりたい仕事を勝ち取っていくのです。


4. 30代・40代のミドルマネジメントが果たすべき「真の教育」とは

この記事を読んでいるあなたが30代・40代のリーダーやマネージャーであるなら、現場でこうした「勘違い」を起こしている部下や後輩に、どう向き合うべきでしょうか。

ただ感情的に「もっと働け!」「生ぬるいことを言うな!」と一蹴しても、現代の若手には響きません。むしろ「精神論を押し付けられた」と心を閉ざし、離職につながるだけです。

必要なのは、「経済的実態の可視化」と「プロとしてのリスペクト」です。

① コストと数字の仕組みを徹底的に言語化する

部下に嫌われることを恐れず、そのチームや個人にかかっている「本当のコスト」と「求められる限界利益」を数字で提示してください。「君の給料が◯◯万円だから、会社としては最低でも月◯◯万円の粗利を出して初めてトントンなんだよ」という構造を、ロジカルに教えることが上司の責任です。

② 「自立」の先にしか自由がないことを示す

「君のやりたい企画や働き方を応援したい。だからこそ、まずは周囲をぐうの音も出させないレベルで自給自足(自分のコスト以上の成果)を達成しよう。そこをクリアしたら、君の好きなスタイルを全面解禁する」という取引(コミットメント)を行います。

自立していない人間に自由を与えるのは放任ですが、自立した人間に自由を与えるのは適切な権限移譲です。


最後に:ビジネスの起点「earn」に立ち返ろう

仕事ができる人材、市場価値の高いプロフェッショナルとは、例外なく「自分がどれだけの価値を生み出し、どれだけのコストを消費しているか」に研ぎ澄まされた感覚を持っています。

  • 「自分は今日、給料以上の価値を会社と顧客に提供できたか?」
  • 「周りのリソースを奪う存在になっていないか?」

この問いに胸を張って「YES」と答えることができる。それこそが、真の「自分らしい働き方」を手に入れるための唯一のパスポートなのです。

もしあなたが、職場の人間関係や評価、後輩の育成に悩んでいるなら??まずは自分自身が「稼ぐプロ」としての背中を見せられているか、静かに胸に手を当てて問いかけてみてください。


【参考記事】

「またメールの取りまとめか…」と溜息をつく若手コンサルへ。実は一斉送信メールほど、相手の心理を読み、思考を誘導する【他者操作】をノーリスクで試せる最高の実験場はありません。雑用を「相手を動かすゲーム」に変える思考法を解説 https://cafemobilework.com/workstyle21/

「PCとスマホが同時に不調…」それ、単なる寿命や偶然ではありません。プロジェクトの炎上も企業の赤字も、必ず数ヶ月前から「微小な違和感」が出現している。機器の不調から学ぶ、重大な事故を防ぐコンサルタントの【リスク予兆察知術】を解説しました https://cafemobilework.com/pc_breakdown/

30代・40代で「時間がない」を言い訳にする人と、武器にする人の決定的な差。役職が上がるほど「まとまった時間」なんて二度と手に入りません。移動中の10分で成果を叩き出す「仮説思考」と「タスクの超解像度化」の極意。 https://cafemobilework.com/workstyle/

返信がない。資料の背景がない。飲み会の幹事ができない。「Z世代の価値観を尊重しよう」の裏で、現場の30代・40代が疲弊していませんか?若手を持ち上げすぎた組織が陥る「ベテラン離反」のリスクと、媚びずに育てる【第3のアプローチ】 https://cafemobilework.com/generation_z/


30代・40代で成果を出す人間は、根性論を信じません。信じるのは「数値(ログ)」だけです。買ったらアプリで「+1」と押す。ただこれだけで、脳は勝手に自己制御を開始する。「意志の力」を一切使わずに自分をコントロールする知的な習慣化の技術。 https://cafemobilework.com/logging/


「Excelやパワポは完璧なのに、なぜか仕事ができない…」コンサル現場で数百人を見て気づいたのは、スキル以前の『メタ認知力(自分と状況を客観視する力)』の差です。 https://cafemobilework.com/experiment/


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