「今のプロジェクト、自分のやりたいことと違うんですよね」
入社して1年足らずの若手コンサルタントが、そう言い残して会社を去っていった。
彼の希望は「自らの手でコードを書き、プロダクトを作る開発業務」だった。うちのファームではPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)や泥臭い業務整理ばかりで希望が叶わないとし、大手SIerへとキャリアを移したのだ。
表面的には「自分のキャリア軸に合わせた前向きな転職」に見えるかもしれない。
しかし、現場で長年彼らの出入りを見届けてきた私から言わせれば、この手の「やりたいこと」を免罪符にした転職の8割は、単なる環境への甘えであり、ただの失敗に終わる。
なぜなら、彼らは致命的な勘違いをしているからだ。
世の中のどこかに「自分がやりたい理想の仕事」があらかじめ用意されていて、転職すればそれが手に入ると信じ込んでいる。断言するが、そんな都合の良い職場などこの世のどこにも存在しない。
【問題提起】違和感の正体――私たちが現場で直面している「直視すべき現実」
隣の芝生へ逃げ込む「お客様体質」の若手たち
SIerに行けば開発ができると信じて飛び立った彼を待っている現実は、火を見るより明らかだ。
大手SIerのSE(システムエンジニア)が担う主業務は、協力会社の管理、仕様調整、社内政治、そして膨大な手続き書類の作成だ。実際に「手を動かしてコードを書く」のは下請けのベンダースタッフであり、彼が望んでいたようなクリエイティブな開発体験などそこにはない。
「こんなはずじゃなかった」と、彼はまた数年後に「やりたいこと」を探して次の会社へ逃げるのだろう。
このように、「やりたい仕事が与えられない」と不満を漏らす若手に共通しているのは、驚くほどの「お客様体質(カスタマーマインド)」だ。
- 会社や上司が、自分にぴったりな魅力的な案件を宛がってくれると思っている。
- 基礎的なスキルも信用もない状態から「やりたいこと」を主張する。
- 泥臭い下積み業務を「自分の成長につながらない無駄」と切り捨てる。
近年の「とりあえずコンサルに行けば成長できる」というキャリアブームの弊害か、スマートな格好良さだけを求めて入社し、現場の泥臭さに直面した途端、「ここは自分の居場所じゃない」と勘違いして逃げ出す若手が後を絶たない。
【独自持論】なぜこの構造が野放しにされるのか? 歪みが生む「本当の危機」
「やりたいこと」は与えられるものではなく、強奪するものだ
なぜ彼らはこれほどまでに「やりたいこと幻想」に毒されてしまうのか。原因は、メディアや転職エージェントが垂れ流す「やりたいことを仕事にしよう」「自分の軸に合った職場を選ぼう」という耳心地の良い甘言にある。
しかし、ビジネスの現場における真実(裏のリアル)は全く異なる。
「やりたい仕事」とは、会社から与えられるものではなく、目の前の現場で圧巻の成果を出し、圧倒的な「信用残高」を稼いだ人間が自ら社内から奪い取るものなのだ。
| 比較軸 | 表向きの建前(転職を繰り返す若手の幻想) | 筆者が看破する裏のリアル(現場で生き残るプロの思考) |
|---|---|---|
| 仕事に対する姿勢 | 会社が自分に「やりたい仕事」を用意すべき | 信用を稼ぎ、やりたい仕事を「自ら創出・強奪」する |
| 下積み・泥臭い業務 | 成長を阻害する「無駄でつまらない雑用」 | 圧倒的な能力を示し、次の打席を勝ち取る「踏み台」 |
| 転職の動機 | 今の環境に自分の「やりたいこと」がない | 現職で信用を勝ち取れず、環境のせいにしている逃げ |
| 「やりたいこと」の定義 | 入社前から頭の中にある「明確な理想イメージ」 | 泥臭い実務を通じて、後から「輪郭が見えてくるもの」 |
| 到達する将来 | 理想を追い求め、職場を転々とする「キャリア難民」 | どんな環境でも案件と予算を引き寄せる「キーマン」 |
実際、先ほど挙げた彼の場合も、現職で信頼を勝ち取っていれば、社内の技術寄りの新規事業やPoC(概念実証)案件にアサインされる道はいくらでもあった。
社内で一番早く泥臭いPMO業務を終わらせ、「余った時間で開発チームの案件を手伝う」くらいの強かさを見せれば、上司だって喜んでそちらへシフトさせてくれたはずだ。
それをせず、現職での信用稼ぎを放棄して外に理想を求めるのは、単に「成果を出す努力をせずに、美味しいところだけ食べさせろ」と言っているのに等しい。
【生存戦略】閾値を超える前に――個人が取るべき「具体的な自衛策と決断」
「やりたいこと探し」の迷子になり、キャリアを自滅させないために、あなたが今すぐ取るべき「4つの行動指針」を提示する。
1. 「やりたいこと」の前に「できること(圧倒的成果)」を作れ
信頼もスキルもない人間の「これがやりたい」など、組織にとってはただのワガママでありノイズだ。
まずは目の前の「やりたくない泥臭い業務」で、周囲がぐうの音も出ないほどのスピードと品質を叩き出せ。100点の成果を出して初めて、あなたは自分の希望を主張する「交渉権」を手にする。
2. 今いる場所で「小さなやりたいこと」を勝手に創出せよ
会社から与えられる案件に文句を言うな。既存のプロジェクトの中で、自分の興味のある要素(分析手法の変更、新しいツールの導入、業務効率化の自動化など)を勝手に組み込め。
指示された枠組みを超えて「勝手に仕事を面白くする能力」がない人間は、どんな会社へ行っても指示待ちの退屈な作業員で終わる。
3. 「やりたいこと」の解像度を疑え
あなたが語る「やりたいこと」は、単なる表面的なイメージや響きの格好良さに騙されていないか?
「開発がしたい」「戦略がやりたい」というアバウトな言葉を分解せよ。自分は何にモチベーションを感じるのか(課題解決の瞬間か、チームの成果か、思考の深さか)。実務の経験を通じてしか、「やりたいこと」の本当の輪郭は見えてこない。
4. 基礎スキルを磨くための「サバイバル本」を泥臭く叩き込め
他人に依存せず、最速で成果を出して社内で自由に立ち回るためには、OSとなる基礎スキルの習得が不可欠だ。
『コンサル一年目が学ぶこと』で構造化思考や報告スタイルなどのポータブルスキルを固め、『コンサル0年目の教科書』で上司を使い倒して最速で成果を出す動き方を学べ。そして『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』を読み込み、社内政治や現場の壁を泥臭く突破する泥臭いタフネスを身につけよ。
まとめ & 読者への問いかけ
「やりたい仕事」を探して職場を転々とする旅は、今日限りで終わりにしよう。
青い鳥は、転職先のオフィスビルにはいない。あなたが今日、目の前の退屈な業務を圧倒的な品質で終わらせ、周囲からの絶大な信用を勝ち取ったその足元にしか存在しないのだ。
会社に自分を満足させてもらおうとする「お客様」でいるうちは、どこへ行っても不満と挫折が待っている。
環境のせいにするのをやめ、自分の手で仕事を面白くし、欲しい打席を奪い取りに行け。
あなたはこれからも「理想の職場」を求めて転職を繰り返す「キャリア難民」であり続けるのだろうか?
それとも、どんな泥臭い現場からでも圧倒的な信用を稼ぎ、自分の手で理想の仕事を創り出す「本物のプロ」になるだろうか?
明日の朝、目の前の「つまらない仕事」を誰よりも早く終わらせることから、すべてが変わり始める。
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