“意義”を盾にしてる間に、評価は消える

仕事の環境

「稼ぐ」とは、コンサルタントにとって最も現実的かつ避けられない評価軸だ。どんなに理想を語っても、結果が伴わなければ信頼もキャリアも築けない。そんな前提を無視したような出来事に、最近直面した。

コンサル・コード―プロフェッショナルの行動規範48―
本書は、『コンサル脳を鍛える』の著者の中村健太郎氏が長年にわたって開発してきたコンサルタントの行動規範集であり、コンサルタントとしての訓練をはじめる人のための「実践的かつ正しいアクションが書かれたスキルブック」です。

稼げないコンサルタントほど、手の負えないものはない

とある公共系のコンサルティング部門にて。今年の収益目標を提示したところ、「人工商売でそんなに稼げるはずがない」と強く反論してきたメンバーがいた。

しかし、その目標は他部隊と比べて明らかに低く設定されており、いわば“温情的な数字”だった。それを知ってか知らずか、おそらく分かっていながら、強気に啖呵を切ったのだろう。

話している相手(=私)が、かつて自分と同じ公共系領域で成果を出してきたことを知らないのか。言い訳として稚拙すぎるし、自分の立場をわきまえず、相手の経験を軽視している点でも、非常に危うい。

稼げない人ほど、目標を下げるための言い訳を磨く

稼げないコンサルほど、「稼げない理由」を立派に語る。市場環境、制度、担当顧客、組織構造…あらゆる外的要因を盾にして、自分の成果の低さを“戦略的に”正当化する。

しかし、実際にはその説明力や交渉力を、顧客のために使えば売上は上がるはずなのだ。つまり、力の使い方を間違っている。

なぜ社外ではなく、社内でばかり説得力を発揮するのか。その行動原理こそが、“稼げない”最大の要因ではないかと思う。

「意義ある仕事」と「稼ぐ仕事」は両立する

よくある言い訳の一つに、「この仕事はお金になりにくいが、社会的意義がある」という主張がある。だが、意義があるならなおのこと、それを価値に変え、報酬として得る仕組みを作るべきではないか。

稼げないコンサルは、「意義」を盾にしているだけで、実のところ本当の意味での社会的インパクトも生み出していないケースが多い。実際に意義ある成果を出している人は、それが収益にも反映されている。

評価の基準は結局「稼ぎ」である

どれだけプロジェクトの背景が複雑でも、どれだけ労力を割いていても、評価の決め手は「稼いだかどうか」である。これは厳しいが、極めてシンプルな原理だ。

現場で“価値”を提供しているなら、報酬として返ってくる。もし返ってこないなら、それは価値の出し方、見せ方、売り方のどこかに問題がある。

稼がないことに鈍感な人は、危機にも鈍感
今、コンサル業界は明らかに転換期にある。1〜2年前のような拡大基調は過ぎ去り、淘汰のフェーズに突入している。

この環境下で“稼げないまま”のスタンスをとり続けることは、自ら退場を選んでいるのと同じだ。にもかかわらず、それを自覚せず、同じ言い訳を繰り返す人がいる。この「危機への鈍感さ」こそが、致命的だ。

稼げないコンサルが変わるために必要なこと

ここまで述べてきたように、「稼げないコンサルタント」にはいくつかの典型的な特徴がある。目標を下げるための言い訳を磨く、稼げないことへの鈍感さを持つ、意義を盾に行動を変えようとしない——。

では、どうすればこの状況から抜け出せるのか。

第一に、「稼げる状態」とは何かを再定義する必要がある。単に収益額の大小ではなく、「価値を創造し、それを見える形で届け、正当に対価を得ている状態」である。これは自己満足ではなく、顧客や社会からの評価を通じて初めて成立する。

第二に、自分自身をコンサルティングする目を持つべきだ。クライアントには仮説を立て、現状分析をし、改善案を提示するのに、自分の業務や振る舞いには無自覚でいる人が多い。コンサルタントとして生き残るには、自己変革の力が不可欠である。

第三に、「意義のある仕事=収益にならない仕事」という固定観念を捨てることだ。むしろ、意義があるなら、それをきちんと価値として届け、売上に変える仕組みをつくる努力を惜しむべきではない。意義を盾に逃げるのではなく、武器にして前に出るという発想が必要だ。

また今、コンサル業界は明らかに転換点を迎えている。プロジェクト単価の低下、競争の激化、そしてクライアント側の選別の厳しさ。こうした環境の変化に応じて、自らの時間の使い方、案件選び、スキル開発への投資の方向性も再設計すべき時期にきている。

ここで問いたい。

「社内の目標を下げる」ために使っているその言語化力や交渉力を、なぜ顧客の価値創造に使わないのか?「自分は頑張っている」と言うなら、その頑張りはなぜ成果に結びつかないのか?

これからの時代、「稼げないコンサル」は淘汰されていく。それは能力の問題ではない。思考と行動の切り替えができるかどうかの問題だ。そのためにはまず、自分自身の問いを変える必要がある。

「なぜ稼げないのか?」ではなく、「どうすれば稼げるのか?」
「どう説明するか?」ではなく、「どう成果を出すか?」

稼げない理由を探すことに時間を費やすのではなく、稼ぐために行動を変えることにリソースを使うこと。それこそが、今すぐにでも始めるべき唯一の戦略である。

コンサル・コード―プロフェッショナルの行動規範48―
本書は、『コンサル脳を鍛える』の著者の中村健太郎氏が長年にわたって開発してきたコンサルタントの行動規範集であり、コンサルタントとしての訓練をはじめる人のための「実践的かつ正しいアクションが書かれたスキルブック」です。

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