導入:華やかなイメージと、現場の手触り感のギャップ
「きれいなPowerPointを作成し、企業の経営陣に向かって歯切れよく戦略を語る」
リサーチやコンサルティング、シンクタンク業界に対して、このようなスマートなイメージを抱いている方は少なくありません。しかし、実際の現場を知る者から言わせれば、そのイメージに該当する仕事はほんのごく一部に過ぎません。
一口に「コンサル」「シンクタンク」と言っても、所属する会社や対象とする業界、プロジェクトのフェーズによって実際にやっている作業は全く異なります。
業界未経験の方には手触り感が湧きにくいかもしれませんが、実態は「全方位的に優れた完璧な戦略」を出すことなど不可能です。むしろ、地道に事例を収集・分析し、データを指標化する作業に没頭し、超短期の納期に向けて連日ディスカッションを重ねる泥臭い日々こそが、この業務の本質と言えます。
業界関係者の間で「コンサルとは高級人材派遣業である」と表現されることがあります。顧客の個別事情に応じて、小難しい作業を最適化して提供する。これが現場のリアルです。
リサーチ・コンサル業務の本質を解剖する「5つのプロセス」
業務内容が多種多様だからこそ、あえて共通項を抜き出し、抽象化すると業務プロセスは以下の5つに集約されます。
- 問題意識を持つ
- 問いを立てる
- 調べる(リサーチ)
- 意味を考える(インサイトの抽出)
- 顧客に伝え、行動を起こさせる
プロセスの形自体はシンプルに見えるかもしれません。しかし、このプロセスのうちどこからスタートできるかによって、二流と一流の明確な壁が存在します。
「二流」と「一流」を分ける境界線:自発的な問題意識
顧客から「この市場について調べてほしい」「この課題の解決策を出してほしい」と指示や問題提起を受けてから動くリサーチ・コンサルタントは、厳しい言い方をすれば「指示待ちの作業者」です。
なぜなら、言われた通りに分析し、データをまとめて意味を抽出する作業は、今や生成AIが最も得意とする領域だからです。小手先のスピードや正確性、作業の自動化は単なる戦術レベルの話に過ぎません。
本当に価値のある「一流」のコンサルタント・リサーチャーは、以下の動きをします。
顧客に先立ち、顧客自身も気づいていない潜在的な問題意識を自ら持ち、そこから独自の『問い』を立てられるか。
顧客すら言語化できていない違和感や課題の芽を自発的に察知し、自ら問いを立てて意味を見出すこと。これこそが、AIには代替できない人間固有の付加価値であり、戦略レベルでの最大の差別化要素となります。
学者との違いは「地に足のついた実務感覚」にある
「自発的に問題意識を持つ」と言うと、大学の研究者や教授をイメージするかもしれません。しかし、コンサルタントと大学の先生方は根本的に異なる存在です。
学者の方々の強みは、学術的・理論的な探求です。一方で、リサーチ・コンサルタントに求められるのは「現実の実務を踏まえた問題意識」です。
- 学者の問題意識: 理論的・学術的な探求(時に現実から離れた抽象論)
- コンサルタントの問題意識: 実際の現場で人が動き、お金が動くビジネスの世界で「有用」な課題提起
地に足のついていない机上の空論ではなく、「これを解くことで現場が動き、事業が成長する」という実務に直結した問題意識を持てるかどうかが、実務家としてのプロの証です。
結び:AI時代だからこそ価値が増す「経験と思考の積み重ね」
若手コンサルタントの中には、「AIを使えば調査が自動化できる」「作業スピードが格段に上がる」といった最新テクノロジーや小手先のスキルに目を奪われがちな人もいます。
もちろん、ツールの活用自体は業務効率化において重要です。しかし、どれだけテクノロジーが進化しても、「その人だからこそ気づく、どうしても気になって仕方がない問題意識」をAIが勝手に生み出してくれることはありません。
本質的な差別化を生むのは、小手先の技術ではなく、どれだけ現場の経験と思考を泥臭く積み重ねてきたかという時間の厚みです。
一朝一夕では身につかない「自発的な問題意識」と「実務感覚」。これらを研ぎ澄ませることこそが、変化の激しい時代においても生き残るリサーチ・コンサルタントの真の強みとなるのです。


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