コンサル会社に入社する若手社員の中には、相応の割合で、ルーチンワークは自分の仕事ではない、派遣社員の仕事であり自分がやる意味がわからない、などなど、まだ仕事のいろはも十分に知らないうちから、結構な発言をする。
自分は、新しい価値を生み出す人間であり、やればできることが分かっている定型的な仕事をやるためにいるのではない。そういった気概で働こうとしている気の強さだけは重要かもしれない。しかし、本当に定型的な仕事は不要なのだろうか。
定型的で、ルーチンが決まっている、誰でも時間さえかければできてしまう仕事であっても、重要な仕事いうものはある。そして意外にも、このルーチンワークをしっかりやっている人と、やっていない人とで、将来大きな能力差を生み出すものである。
ここでは定型的な仕事、ルーチンワークと言われるものでも、そこに含まれる重要なポイントが含まれる例をいくつか示したい。
1.社内メンバーの調整作業
多くの場合、社内の複数メンバーで打ち合わせをしたり、共同で何か物を購入したりする、部署全体の実施タスクの取りまとめなど、社内メンバーの利害や意見を調整する作業が発生する。例えば、一番わかりやすいのが、部署の飲み会の企画・調整であろうか。
これらの調整業務は、いってみればコンサルタントの本業である、クライアントへのプレゼン、資料作成などと比較して、地味で、誰がやってもできるものとみなされがちである。
だからこそ、しばしば新入社員や若手社員、状況によっては派遣社員の方に実施してもらう部署も多いはずである。
単純な作業・タスクをいう目でこの調整作業をみると、社内メンバーにメールを出して、返信を回収し、結果を一覧表にして整理し、上司に報告する。至極、簡単な事務作業だ。その上、面倒な先輩社員、音信不通な同僚などからも回答を刈り取らなくてはならないとなると、手間ばかりかかるが、何ら評価されることがなさそうな作業となる。
果たして、本当にそうなのだろうか。見方を変えれば、実のところさまざまな情報を得られる、もしくは学習できる実験場として、この社内メンバーの調整業務を捉えることはできないか。
2.例えば、部署内の全ての人とコミュニケーションを取れる機会
社内メンバーの調整業務となると、その部署の全てのメンバーに声をかけ、趣旨を説明し、何らかのアクションを起こしてもらう必要がある。確かに面倒な作業である。しかし見方を変えれば、全てのメンバーにアクセスして話をするための、正当な大義名分を得ることができる作業とも言えないだろうか。
何を大袈裟な。所詮、社内ではないか。いつでも社内メンバーにはコミュニケーションとれるのであるから、大義名分など不要という意見もあろう。
思い浮かべて欲しい。この大義名分がない場合、今まで自発的に全てのメンバーに話しかけようと自分自身で思ったことはあるだろうか?ほとんどの人はそんなことはないはずである。
必要な時に必要な人に話をしにいくのは至極真っ当であるが、実は、全ての人に話に行く必要性はほとんど発生しない。多くて身近な2~3人程度に話をしに行ったことがある程度が普通であろう。
そう考えると、社内メンバーの調整業務という大義名分を得ることで、自分自身のインセンティブが発生するし、声をかけに行っても全く不自然ではなくなる。社内であっても用もないのに話をしに行くのはやりにくいものである。その意味で、社内メンバーの調整業務は、重要な機会を生み出す作業なのである。
3.学習効果はルーチンワークや繰り返し作業でその威力を発揮する
コンサル会社社員として能力を伸ばすためには、何をしたら良いだろうか.毎回異なる課題に対して、常にゼロベースから物事を考えることを求められるコンサル。簡単にこれをやれば能力が上がるというものはない。
その中で、重要な考え方は、様々なタスクを分解し、そのタスクを構成するサブタスク、さらにそのサブタスクに分解して、基本となるマイクロタスクを特定していくことである。このマイクロタスクのレベルになると、ある意味での繰り返し作業となるのである。
このマイクロレベルのタスクで、圧倒的な生産性を高めていくと、曖昧模糊としたタスクを、常にゼロベースでの課題解決が求められるタスクを、いつしか生産性高くこなすことができるようになる。
タスク分解が初めからできるかと言われるとそれ自体が難しい。ではどうするかというと、ルーチンワーク、定型的な作業でその力を身につけるのである。ルーチンワークや提携的な作業と言われるだけあって、その課題はわかりやすいし、形が常に同じである。だからこそ、分解しやすいし、一度分解したサブタスクは繰り返し実践して、実行能力を学習しやすい。
この繰り返し作業の学習効果は、やればやるほど熟度が増していく。素直にやった分だけ能力が上がっていく。この学習効果を複数のサブタスクで獲得して、それらを総合して、コンサルの仕事をしていくのである。
だからこそ、ルーチンワーク、定型作業を馬鹿にしたりせず、新人や若手のうちは率先して実施し、着意を持って実施していくことが成長の近道になるのである。ただ、その本質を理解しない、できないと、ルーチンワークなどに対して不平不満をいう、また不実施という行動に出るのである。
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