「地頭が良いだけでは通用しない」中堅コンサルタントが失速する決定的な理由:瞬発力依存からの脱却

仕事の環境

導入:瞬発力に頼る「見せかけのプロ」への警鐘

コンサルタントとして働く皆さんは、常に複数のタスクに追われ、複雑な課題解決を求められます。

多くの若手コンサルタントは、その「地頭の良さ」「瞬発力」を武器に、初めて直面する難題をギリギリで乗り切ります。周囲も「彼はできる」と評価し、本人も「自分は瞬発力があるから大丈夫だ」と、一種の成功体験として自信を持つことでしょう。

確かに、これはプロとしての第一歩です。しかし、真に力のある中堅以降のコンサルタントは、この瞬発力だけに頼ることはありません。なぜなら、彼らにはさらに多くの、重要かつ複雑な仕事が舞い込んでくるからです。

そして、彼らはそれを「無理!!」と周囲に愚痴を撒き散らすことなく、しっかりと周囲を巻き込みタスクをグリップしてやり遂げます

この差こそが、一見できるがやがて失速する「見せかけのコンサルタント」と、着実に成長し続ける「真に力のあるコンサルタント」を分ける決定的な分岐点です。


1. 瞬発力依存の限界:仕事が「降りかかってくる」構造

若手時代、瞬発力で乗り切ることに慣れてしまうと、以下のような悪循環に陥りやすくなります。

  1. リアクション型になる: 常にタスクやフィードバック、トラブルといった「予期せぬ出来事」に反応(リアクション)するだけで、主導権が握れません。
  2. 余裕がなくなる: 次から次へと仕事が「降りかかってくる」ように感じ、常に余裕がなく、焦りが生じる。
  3. 内なる責任転嫁: 結局、品質や納期が守れなくなると、環境や「マネージャーの仕事の振り方が悪い」と周囲に愚痴をこぼし、自らの問題と向き合わなくなる。

真のプロフェッショナルは、仕事が「降りかかってくる」のを待つのではなく、「予測したタスクを自ら迎えに行く」状態を意図的に作り出しています。

その武器こそが、「先読み力(予測力)」です。


2. 真に力のあるコンサルタントの武器:「先読み力」の3つの実践

真に力のあるコンサルタントは、自分のミッション、顧客の状況、議論の流れを鑑み、次に何が起きるかを予測してあらかじめ布石を打ちます

若手コンサルタントが今日から実践できる「タスク予測」の具体的な布石を3つ紹介します。

2-1. 【アウトプットの先読み】納期ではなく「手戻り発生日」を逆算せよ

瞬発力依存型は、最終「納期」だけを見て資料を完成させようとします。しかし、真に危険なのは納期当日ではなく、その後のフィードバックで手戻りが発覚する瞬間です。

  • 予測力の実践: 顧客やマネージャーが必ずツッコミを入れる箇所をあらかじめ予測します。
  • 布石: 最終納期前に、「論点がズレていないか確認したい」という名目で、あえてラフな状態のドラフトをキーマンに個別共有する時間をカレンダーに確保しておきます。

手戻りをできる限り早い段階で吸収することで、最終段階の時間を確保し、品質を盤石にします。これは、単に資料を完成させるのではなく、「手戻りをコントロールする」技術です。

2-2. 【リソースの先読み】仕事が確定する前に「周囲の負荷」を予約せよ

仕事が多くなるほど、周囲の協力を仰ぐ必要が出てきます。しかし、自分のタスクが詰まってから慌てて依頼しても、周囲も余裕がないことがほとんどです。

  • 予測力の実践: 自分のミッション達成に誰の専門知識や時間が不可欠かを事前に予測します。
  • 布石: プロジェクトの初期段階で、マネージャーに「この分析は〇〇さんの知見がないと無理なので、来週の午前中に2時間のブロックを確保させてください」とリソースを先に押さえます

この「先約」は、タスクが顕在化してから頼むよりもずっとスムーズで、周囲を巻き込むことへの心理的ハードルも下げてくれます

2-3. 【コミュニケーションの先読み】相手の「次の疑問」に備えて準備せよ

会議やプレゼンでは、目の前の質問に答えること以上に、「この答えを出したら、次に何を聞かれるか?」を予測することが重要です。

  • 予測力の実践: 相手の思考回路をシミュレーションし、論点がどこへ向かうかを予測します。
  • 布石: メインの資料とは別に、「想定Q&Aリスト」や、深掘りされた際に提示するための「隠しスライド」を準備しておきます。

これにより、議論の流れを常にコントロールし、相手に「このコンサルタントは深く考えている」という信頼感を与えることができます。


3. 先読み力は「地頭」ではなく「ロジックの訓練」で身につく

「予測力」と聞くと、生まれ持った才能、つまり「地頭」のように感じるかもしれません。しかし、そうではありません。

この力は、若手時代に徹底的に訓練した「ロジック調整」の経験から生まれる再現可能なスキルです。

  • ロジックの訓練とは?
    • 単にロジックツリーを美しく描くことではありません。
    • 「このロジックには、顧客は〇〇という反論をぶつけてくるだろう」
    • 「この結論を出すためには、〇〇というデータが決定的に不足している」
    • 「この構成で進めると、終盤で必ず論点ブレが起きる」

このような「ロジックの穴」と「相手の思考」を予測し、先に埋める経験知こそが、中堅以降のコンサルタントの真の価値となります。

コンサルタントの数が急増し、誰でもコンサルタントを名乗れるようになった今だからこそ、この本質的な予測力を持つ人材の価値は際立って伸びていくでしょう。

「仕事が多すぎる」と嘆く前に、まずは明日降ってくるタスクではなく、「来週起きるだろう最大の手戻り」を一つだけ予測し、その布石を打つことから始めてみませんか?

その小さな一歩が、あなたを瞬発力頼みの限界から解放し、真に成果を出すプロフェッショナルへと進化させる鍵となります。


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頑張るのが苦手なのは、頑張る技術を知らないからだ。

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