会議後の議事録作成、本当に面倒ですよね。
「クライアントの話、聞きながらメモ取るのキツいな……」
「2時間の会議の議事録、まとめるのに5時間かかった……」
そんな苦痛から、今や生成AIのおかげで解放されつつあります。会議の音声をAIに食わせれば、たった30分そこらで議事録のたたき台が完成してしまう。シニアコンサルタントはそれを素早く手直しし、次の打ち手や顧客への対応を光の速さで考えられるようになった。
この変化は、手放しで喜ぶべきことなのでしょうか?
実は、このテクノロジーの進化が、将来のコンサルタントの「基礎力」を静かに蝕んでいるとしたら……。かつて若手コンサルが議事録作成を通じて得ていた、ある重要な成長機会について深掘りしていきます。
議事録作成は本当に「誰でもできる雑用」だったのか?
議事録は、単に会議の内容を文字に起こすだけの作業ではありません。そこには、若手が必ず通るべき「修行」のステップがありました。
通常、議事録作成は以下の3つのステップで行われます。
- 録音:会議で話し合われた発言を頭に、あるいはノートに記録する
- 音声文字認識:膨大な「話し言葉」を文字情報に落とし込む
- 議事メモ整理:議事録として、要点を抽出し、論理的にまとめる
これまでの若手コンサルは、この3ステップをほぼすべて自力でこなしていました。特に、ステップ2と3が成長の鍵を握っていたのです。
例えば、あるクライアントとの会議。専門用語が飛び交う中、若手はひたすら耳を澄ませ、リアルタイムでノートに書き殴ります。
「〇〇プロジェクト、現状の課題は、A社のレガシーシステムがボトルネックになっているという点と、B部門との連携ができていないという…」
こんな話し言葉を、頭の中で即座に整理しながら「〇〇プロジェクトの課題:A社システム、B部門連携」のように要約していく。会議中、この作業を延々と続けることで、「話を聞きながら要点を掴む力」が鍛えられました。
そして会議後、2時間の録音データを4〜8時間かけて聞き直し、不要な相槌や繰り返しを削ぎ落とす。バラバラの情報を因果関係でつなぎ、論理的な流れを持つ「議事録」に整形する。この作業を通じて、「膨大な情報から本質を抽出し、論理的に構成する力」が身についたのです。
このトレーニングは、コンサルタントにとって最も重要な「思考の基礎体力」そのものでした。
なぜ誰も「成長機会の喪失」に危機感を持たないのか
AIに議事録作成を任せることが当たり前になった今、かつての若手コンサルは声を揃えて「楽になった」と喜びます。確かに、彼らにとって議事録はすでに身についたスキルの「確認作業」であり、単純な負荷でしかありませんでした。
しかし、これからコンサルティング業界に入ってくる学生の皆さんはどうでしょう。
彼らは、議事録の最初から最後までを自分でやり切る機会をほとんど与えられません。AIがたたき台を作ってくれるので、自分でゼロから文字に起こす苦労を知らない。情報を頭の中で整理してまとめるトレーニングも、AIが代行してくれます。
これは、マラソン選手が基礎体力づくりの練習を飛ばしていきなり本番に挑むようなものです。
「議事録作成は雑用で、もっと本質的な仕事に集中できるようになった」という論調は正しい側面もあります。しかし、その「雑用」の中にこそ、未来のコンサルタントにとって欠かせない学びが詰まっていたのです。
誰かがこの危機感を訴えなければ、数年後、話の要点を掴めず、論理的に文章を組み立てられないコンサルタントが増えてしまうかもしれません。
AI時代に失われるスキル、どう補うべきか?
では、議事録作成に代わるトレーニングは存在するのでしょうか?
AIの恩恵を最大限に活かしつつ、コンサルタントとしての基礎力を育むための代替策をいくつか考えてみました。
- メンターとの「壁打ち」を増やす:AIに議事録作成を任せる分、その時間を上司や先輩との壁打ち(ディスカッション)に充てる。議論の中で思考を瞬時に言語化し、論点を整理する練習を繰り返す。
- 「要約・再構成」の反復練習:AIが作成した議事録を鵜呑みにせず、「もしこの議事録を30秒で話すとしたら?」「クライアントが一番知りたいことは何か?」といった視点で、何度も要約・再構成を繰り返す。
- 音声データを使った「自主トレ」:会議の音声データを自分だけで聞き直し、「AIならどう要約するか」「自分ならどうまとめるか」を考えながら文字に起こしてみる。AIを「答え合わせ」として使うのです。
AIは、私たちから「面倒な作業」を奪う一方で、「本質的な能力を鍛える機会」も同時に奪う可能性があります。このリスクを理解した上で、主体的に成長機会を創出していく意識こそが、AI時代に求められるコンサルタント像なのかもしれません。
皆さんは、この「議事録問題」にどう向き合っていきますか?
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