コンサルティングファームへの入社を夢見る皆さん、あるいは入社して数ヶ月が経った新人の皆さん。
「コンサルタントの仕事は、知的で華やかだ」
「短期間で圧倒的な成長ができる」
そんなキラキラしたイメージを持っているかもしれません。それは決して間違いではありませんが、一つだけ、コンサルタントという仕事の本質を揺るがすかもしれない問いを投げかけさせてください。
あなたは、業務時間以外もコンサルタントとして振る舞う覚悟がありますか?
「仕事は仕事、プライベートはプライベート」
このごく当たり前で健全な考え方で、コンサルタントの仕事は本当に務まるのでしょうか。
コンサルタントは「8時間労働」では成り立たない
ご存知の通り、現代社会は厳格な労務管理が求められています。1日の労働時間は8時間。週に5日。この限られた時間の中で、クライアントの複雑な課題に最適な解を見つけ出す。一見、論理的で効率的に見えます。
しかし、現実はどうでしょうか。
業務時間中の8時間、私たちは本当に思考だけに集中できているわけではありません。会議、メール対応、資料作成、チーム内でのコミュニケーション…。「考える」という本質的な作業に使える時間は、そのうちのわずか三分の一にも満たないかもしれません。
ある若手社員は、上司から受けた指示について、ひたすらPCの前で考え込もうとしていました。
「どうしてそんなに悩んでるんだ?」と聞くと、彼はこう答えました。
「えっと…勤務時間なので、勤務時間中に終わらせようと思って…」
その真面目さには頭が下がりますが、これでは解決の糸口は見つかりません。なぜなら、本当に良いアイデアや、複雑な問題を解きほぐすヒントは、往々にして業務時間外に不意に訪れるものだからです。
移動中、風呂、布団の中…「四六時中考える」ということ
コンサルタントがやるべき仕事は、PCの前に座っている時間だけで完結するものではありません。
- 移動中の電車の中、ふと目に入った広告からヒントを得る。
- 湯船に浸かっているとき、頭の中で課題の全体像が整理される。
- 布団の中で、眠りにつく直前に「これだ!」と閃く。
これらはすべて、業務時間外に起こる「思考の連鎖」です。まるで、頭の片隅に常に課題が居座り、四六時中その解決策を探しているかのような状態です。そして、この「思考の連鎖」こそが、クライアントに最適な解をもたらすための、最も重要なプロセスなのです。
そして、その閃きや整理された思考は、着想を得た瞬間にメモに残すことが肝心です。
「後で整理すればいい」「週明けに会社でまとめればいい」
そう考えていると、せっかくの貴重なアイデアは、あっという間に記憶の彼方へ消え去ってしまいます。
書く瞑想 1日15分、紙に書き出すと頭と心が整理される 単行本(ソフトカバー) – 2022/1/12
なぜ、他の職種と働き方が違うのか?
このような働き方は、一般的な会社員から見れば異質に映るかもしれません。多くの企業が、厳格な労務管理のもとで「仕事」と「プライベート」を明確に区別し、業務時間外は会社のPCや情報環境から締め出します。
しかし、コンサルタントがやるような仕事は、その中身が好きで面白くてたまらない、探求心と好奇心が原動力となる業務です。
これは「やらされ仕事」ではありません。
「どうすればこの課題を解決できるだろう?」という純粋な問いに対する、答え探しなのです。
あるとき、大手企業から転職してきたばかりの管理職が、私たちの働き方に疑問を呈しました。
「土日もメールを見ているなんて、自己管理ができていない証拠だ!」
彼の考えも理解できます。しかし、コンサルタントにとって土日は「仕事をしない日」ではなく、「普段はできないインプットや、じっくり思考を巡らせる時間」なのです。彼からすれば「管理がずさんだ」と映るかもしれませんが、それはコンサルティングという仕事の特性を理解していないが故の、悲しいミスマッチでした。
コンサルティングという仕事は、会社が導入する一般的な管理手法とは相容れない部分がある。この思想のズレは、往々にして業界の強みを削いでしまうという、皮肉な結果を生み出します。
困難を乗り越え、真のコンサルタントになるために
コンサルタントを志す皆さん、そして若手コンサル社員の皆さん。
「業務時間外も常に考え続けること」は、決して苦行ではありません。むしろ、それはコンサルタントとしての好奇心や探求心の表れであり、この仕事の醍醐味なのです。
会社の厳格な労務管理や、外部からの理解不足に直面することもあるでしょう。しかし、それを言い訳にして思考を止めてはいけません。
自ら考え続ける環境を、創意工夫で創り出してください。
- PCにアクセスできない週末は、手書きのメモ帳を常に持ち歩く。
- 移動中は、スマホのメモ機能や音声入力でアイデアを記録する。
- お風呂の中や就寝前には、頭の中だけで論理を組み立てる。
これらはすべて、あなたが「考える時間」を最大化するための工夫です。
コンサルタントは、単に知識やスキルを売る仕事ではありません。それは、クライアントの課題に真摯に向き合い、四六時中考え抜き、最高の答えを導き出す「生き方」そのものなのです。
コメント