講談社現代新書「高学歴難民」阿部恭子著を読んで思うこと

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いわゆる学歴が大学卒である人々の困難さ、特に有名校と言われる大学を卒業した人々の人生の苦難を取り上げた書籍であるが、ことさら高学歴を取り上げることに今更感があると感じてしまう。

今の世の中、全員ではないが、多くの若者が大学に進学する。数十年前と比べれば、はるかに多くの人が大学人進学する時代である。有名校と言われる大学にも多くの人が進学する。それだけ大学に進学することが一般化した世の中となっては、別に最終学歴が大学卒であろうがなかろうが、人生いろいろということは全く不思議ではない。

同書は、有名校などの大学に進学したのにもかかわらず、社会人生活でうまくいかなかった人々の苦難を取り上げ、ひとつの社会問題のように示している。「高学歴と言われる人」=「社会での成功者」というバイアスが著者自身にあるのではないかと思われる。

ある意味での学歴に対する執着を感じてしまう。執着があるが故に、社会生活の中での困難を学歴に紐づけて、高学歴なのに…という文脈で語る。学歴以外の部分に課題の本質があるはずであろうが、そこについては触れていないところに本書の視野の限定的な部分がある。

むしろ社会人としての生活や仕事において、人生では様々なことが起きること、それに対して二転三転の変化があること、それらを素直に紹介した方がよっぽど考えさせるものになるとも思える。

学歴の視点は、そこにまぶされる一要素に過ぎないのではないか。学歴視点で困難を抱える人々の姿を切り取っているが、視点としてはそれほどエッジが立っていないものではないか。

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